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介護離職のない社会をめざす会 発足記念フォーラムレポート

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2016年3月23日18:30~20:30 於:日本プレスセンター10階ホール

 2016年3月23日、介護離職のない社会をめざす会の発足を記念してフォーラムを開催しました。代表の高木剛氏(全労済協会理事長)のあいさつ、および樋口恵子氏(高齢社会をよくする女性の会理事長)の設立趣意書の読み上げでフォーラムの幕が開けました。

第1部:介護家族者の離職問題

 はじめに、連合の実施した介護に関す調査等について、平川則男氏(総合政策局長)より報告がありました。要介護者が施設入所できるまでに、35.5%の人が介護休業期間93日を超えていること、介護ストレスを感じている人が約8割、憎しみを感じる人も約3分の1を占め、虐待経験があると答えた人も1割強いることが示されました。また、介護休業制度利用者の32.5%の人が社内で何らかの不利益な取り扱い等を受けたことも明らかになっています。
 30代前半で父親の介護のため、その後、認知症の母親とがんの祖母のために2度の介護離職を経験し、現在も介護を続ける工藤広伸氏より体験談が語られました。2度目の離職の際は、転職して1年未満だったために介護休業制度が使えず、また業務の性質上、両立が困難だと判断して退職を選択したということでした。認知症介護の経験は、マネジメント能力など企業内でも生かせることも多く、社内にそのことに理解のある上司がいれば、介護離職が減るのではないかとの指摘がありました。
 それを受け、塩入徹弥氏より大成建設株式会社での取り組みの紹介がありました。女性の活躍と、仕事と生活の調和を推進するに中で、社員の「介護に対する不安」が明らかになり、2010年に仕事と介護の両立支援を開始。介護に専念するための制度的な支援ではなく、介護セミナーや介護に関するリーフレットなど、情報提供に主軸が置かれました。その後、アンケートによるニーズ把握を行い、2014年に介護休業制度拡充をしています。今後はさらなる情報伝達と介護に対する心理的負荷を軽減することに力を注ぐとのことでした。
 働く介護者の状況について、自身も介護離職経験があり、働く介護者でもある、介護離職防止対策促進機構の和氣美枝氏から説明がなされました。働く介護者は、家族・親族、職場、医療・介護、行政・地域などの複数の環境下で複数の役割を担い、それに伴う困難に直面し、さらに自分自身の悩みや不安を抱える場合もあります。介護に関する困難解決のための具体的な情報提供や、介護しながら活躍できる職場の仕組みづくりが必要であると語られました。
 その後、登壇者でのディスカッションが行われました。大成建設の取り組みについて、工藤氏は自分が勤めていた会社にも介護セミナーがあれば離職しなかったかもしれないと言い、和氣氏はケアマネジャー提出用リーフレットが介護者の就業状況を伝えるために有用だと評価していました。塩入氏は制度がある程度充実できたので、今後の心理的なサポートとして社員同士がお互い様の気持ちで助け合う意識の醸成とともに、社員の介護経験を社内で生かせる機会をつくりたいと話し、それに対し、両立している社員の経験は価値があり、ぜひ社内での介護者の集いを実施してほしいと和氣氏からの言葉がありました。社内で介護のことを話せる風土をいかにつくるのかという問いに対し、平川氏からは、社内の環境づくり、介護に関する情報提供、制度の改善を組み合わせていく必要性が指摘されました。
 最後に、工藤氏より本会の設立趣意にある「介護する人が幸せになることで、介護される人も幸せになる社会」という言葉に賛同する、塩入氏からは社会全体として介護に対する意識が変わっていくことを希望する、和氣氏からは介護しながら働くことが当たり前の社会になるために企業・地域・介護業界が連携していくことが大切、平川氏からは介護離職の問題は労使一体で進める必要があるとの言葉をいただき、第1部を終了しました。

第2部:介護従事者の離職問題

 介護業界の労働組合であるUAゼンセン日本介護クラフトユニオンの松本武久氏より、介護従事者の離職状況について報告がありました。日本介護クラフトユニオン調査では、将来への不安や体への負担を抱える介護職員が多く、それを理由に離職した例もあるとのことでした。賃金について不安に感じている人は月給制の人では7割を超えています。実際に結婚を機に他職種へ転職していく男性職員もいるそうです。希望賃金の調査では、月収1万円に賞与等で4万と年間で26万円アップ希望との結果が紹介されました。
 介護事業者の立場から見た介護従事者離職について、全国介護事業者協議会の佐藤優治氏より説明されました。介護労働安定センターの調査では、労働条件等の不満では45%が人手不足を挙げ、退職理由では職場の人間関係や、事業所の理念や運営に不満があったためがトップに上がっています。職員の離職は低賃金の問題だけではなく、事業者の姿勢が問われていることになります。介護事業者は職員満足度を重視し、職員との信頼形成に努力しなければならないことを強調されていました。
 暮らしネット・えんの小島美里氏より、介護保険事業を提供するNPO法人の立場からの報告がありました。1990年代にボランティア団体から出発した暮らしネット・えんでは、当初からのメンバーも多く、意識も高いが、報酬は十分に出せておらず、2015年度の介護報酬改定での減収も大きく響くと言います。今後は加算のつかない事業には十分に対応できなくなっていき、自分たちの求める介護を受けられない社会になっていくと語られました。また、介護“職”離職ゼロは、介護離職ゼロの前提条件だと指摘されました。
 その後のディスカッションでは、佐藤氏より各登壇者にホームヘルプ従事者の扶養控除(103万・130万)の壁についての質問があり、小島氏からは影響を受けにくい時間拘束型のスタッフを増やしているとの話があり、松本氏からは多くの事業所で11月に登録型ヘルパーが時間調整に入るため、正社員の労働時間が増加することが語られ、佐藤氏からもそのために常勤者の負荷が増えて離職につながることもあるとの指摘がありました。
 最後に、松本氏より、設立趣意の「介護を職業とする人が正当に評価され、介護職が離職の少ない誇れる仕事になる社会」と「介護する人が幸せになることで、介護される人も幸せになる社会」という言葉に賛同する、佐藤氏より趣意書に賛同し、また幼児期から介護・福祉への意識を高める教育が必要である、小島氏からは、女性労働者が多く家事労働に近いと考えられている介護職・育児職が低賃金であることには問題があり、また介護力が低い家庭が増えている現状で、要支援2・要介護1・2の認知症の方が介護保険から外されて行き場を失うことがないよう力を貸してほしいとの言葉をいただき、第2部を終えました。

 最後に、幹事の田中尚輝氏(市民福祉団体全国協議会)からの、介護は多くの人の人生を左右するものであり、本当に「介護離職ゼロ」を実現するためには、介護にかかわるすべての当事者が声を上げてなければならないとの言葉でプログラムを終了しました。参加者は180名を超え、終始、会場は熱気に包まれていました。

来場者の声(アンケートより)

Q1 第1部印象に残った言葉・報告

・大成建設の取り組み。いずれもすばらしい。ケアマネジャー提出用リーフレット、名刺サイズのカードなどは実物を配布して参考にしたい(家族介護者)
・「わからないことがわからない」。ある日突然介護者になった人はほとんどこんな感じだと思います。「介護者」という感覚すらないかもしれない。家族の世話は当たり前になっているかもしれません。まずは会社でもよいので介護に関係なく一般常識として制度や、地域包括センターのことだけでも教えておいてほしい。できれば小・中・高・大でも(家族介護者)
・要介護者に対する感情の調査結果。特に憎しみの有無と虐待の有無の数値が高いこと。ストレスは人格をも変えてしまう事実を再認識しました(家族介護者)
・工藤氏の述べた介護する人が幸せになることで介護される人も幸せになる社会(労働組合)
・大成建設の介護に専念することを支援するのではないという言葉が印象に残りました。つき離すようで、実は社員のことを考えていることに感動しました(労働組合)
・要介護職に対する感情、ストレスを感じている人は約8割。憎しみを感じている人約3分の1を占める。1割強は虐待の経験がある、介護経験者の上司がいればいい。介護に関する基本的スタンス、制度充実より情報充実。介護はわからないことがわからない点が難しいセーフティーネットの充実が必要(介護者支援団体)
・どなたも高い志、広い視野(社会変革までみすえた)で働く人が介護で離職することがないよう活動されていた。いろいろな立場の人が一同に会する貴重な機会だったと思いました(行政)
・和気氏の熱のこもったリポート(その他)

Q2 第2部印象に残った言葉・報告

・専門職として、誇りがもてる処遇がほしい。職場の人間関係、事業運営関係が介護職の離職につながっている。事業者の立ち位置が介護職員の動機付けを高める。地域包括ケアは正に措置である。これなしでは介護離職ゼロは実現できない。「介護士、保育士には叙勲を」と首相は本気で言ったのであろうか?(介護者支援団体)
・「えん」の小島さんのお話し。介護職離職がゼロになるのが大前提という現実!!(介護者支援団体)
・離職の大きな要因が賃金ではなく、その他の理由にもあることを認識しました。社会の中におけるケアワーカーの地位向上(賃金のみではなく)を図っていくことが喫緊の課題かと(労働組合)
・介護従事者の経済的支援の必要性をとても感じる(ほこりだけではキャリアイメージが描けない)。事業者の責任。介護は成長産業=社員の雇用確保=条件整備(企業)
・現場の方が必要とされていながら厳しい状況にあることをあらためて認識しました。女性活躍の女性を支える立場の職種に対する評価が低いので2040年崩壊する(行政)

Q3 介護離職のない社会実現のために必要なこと

・介護にかかわりのない人々の無知、無理解が介護者を追い詰めて行っているように感じます。介護というものはどういうものなのか、環境面、経済面、心理面、それぞれ客観的なデータを世の中に伝えて行く必要があるように思う。介護者を助ける(サポートする)ツール等の開発も必要であると思います(家族介護者)
・極端なアイデアですが、企業の近くや中に保育園をつくるように企業が出資して、介護施設などをつくってほしい。その企業の家族が優先的に入れる「福利厚生施設」という感じで、何社かでモデル施設をつくってほしい。私は非正規で離職を繰り返しているので、恩恵は受けられないけれど(家族介護者)
・企業組織の介護者への理解。各組織は介護保険を支払うようになる40歳の時に介護についての情報を発信する(研修等)(介護者支援団体)
・孤立や悩み困りごとを解決する救援センター的な仕組みづくり(企業)
・過去女性が担ってきた労働に対する対価が安すぎるという社会通念を変えたい。制度をつくる人たちと現場とのかい離がどんどん大きくなっていると思います(行政)